(新共同訳聖書スタディ版各書の概説 原文転載)
特徴
ヨシュア記はイスラエル部族がどのようにして約束の地カナンを征服し、その土地を分配したかを描いている。書名はモーセの死後、イスラエルの指導者として選ばれたヨシユアに出来する(1.1-3)。しかし、この書の真の主人公はイスラエルの民がカナンの地を征服するのを助け、約束を果たした神であろう。神はイスラエルの民の先祖であるアブラハムと結んだ最初の契約の中で、アブラハムの子孫がぃつの日か土地を所有することになると約束していた(創12.1-3、15.13-21、17.8)。この約束は、後に律法に基づく第2の契約(シナイ契約)を交わすことになるモーセともなされていた(出3.7,8)。民は過去に神の助けを受けたときと同じように、カナンの地に入る前に神を信頼して律法に従うことが要求され(1.6-9)、その地を征服した後にも同じように要求されている (24.15)。ヨシュァという名には「主(ヤハウエ)は救う」という意味があり、それがヨシュア記の主題と重なっている。神を信頼する者は神の助けを得るのである。イスラエルの民にカナンの地を与えるという神の約束はヨシユア、エルアザル、ラハブ、カレブなどの個人を通して成就し、ヨルダン川渡河、エリコの城壁の崩壊、天からの雹などの奇跡的な出来事において神の力が示されている。
なぜ、書かれたのか?
ヨシュア記は、約束の地に生きる神の民イスラエルの歴史という、申命記から列王記に至る壮大なドラマの一部をなす=カナンの地は神からの恵みであり、それを得るには、神と律法に忠実であることが条件であるというのが主要なテーマとなっている。イスラエルは神の助けによってのみ土地を獲得できるのであり、律法に従順である場合にのみ土地を所有し続けることができた。このテーマはヨシユア記の最後にあるヨシユアの二つの演説で強調されている(23.1-24.28)。ヨシュア記に記されている物語はBC.1250-1225年ころのこととされ、イスラエルの民がどのように約束の地に入り、どのように部族間で土地が分配されたかという二つの重要な問いに答えている。モーセの死後、民の指導者となったヨシュアは民の先頭に立って、カナン人に対する一連の聖戦を導いた。彼の指揮の下、カナンの多くの町が時には奇跡的な形で攻略を交えながら、一気に征服されたとヨシユア記には伝えられている。例えば、エリコの戦いでは神が城壁を崩落させ(6.20)、ギブオンでの戦いでは天から巨大な雹を降らせて敵軍を壊減させるといつた奇跡が語られている(10.11,11)イスラエル諸部族は連合した形でョルダン川を渡り、カナンの地を縦断し、ついには南北に伸びる土地を占領するが、氏族など小集団が一部の土地を征服したとも記されている。ヨシュア記の後半はそれぞれの部族にどのように土地が与えられていつたかが言及されている (13-24章)。 ヨルダン川の西側の土地だけでなく、既にガド、ルベン、マナセの半部族に与えられることが約束されていたコルダン川の東側の土地についても記されている(民32章)。また、神に仕える特別な役割を与えられているレビ族が、他の部族のようには所有する土地が与えられず、各地に点在する町々が与えられたことも説明されている。
どんな背景があるのか?
B.C.1300年から1200年の間にカナンが幾つかの地域で攻撃されたことを示す考古学的証拠が発見されている。ベテル、ラキシユ、デビルといつた町が潰滅させられたとされる。ヨシュァの指揮下に破壊され、あるいは攻略された町もあつたと考えられるが、カナンのすべての町が占領されたわけではなかった(士1章)。ィスラエル諸部族が一つの国としてのまとまりをもつてカナンの地で生活するという状況は、ダビデ王の時代まで待たなければならなかった(B.C.1000年ころ)。ダビデI以後の時代でも数世紀にわたってカナンの文化と宗教はイスラエルに対して影響を与え続けた。聖書の著者にとって、B.C.722年に北イスラエル王国、B.C.586年に南のユダ王国を滅亡に導いた原因の一つは、イスラエルの民がカナン人の偶像を礼拝していたことであった。
構成は?
ヨシユア記は二つに区分される=前半にはカナンの中心的な町の攻略が記されており (1-12章)、カナン制服とぃう歴史的大事件を詳説する多くの物語が伝えられている。後半はそれぞれの部族に分配された土地の境界線の説明であり、その町の名が一覧に記されている(13-22章)。十二部族にはそれぞれ割り当ての地が与えられ、レビ族には各地に点在する町々が与えられた.最後には、ヨシユアの告別の辞と、約束の地に定住した民があらためて神に従うと誓ったシケムでの重要な集会の様子が記されている(23、24章)。
カナンの占領(1.1-12.24)
約束の地に入る(1.1-5.12)
神が戦いにおいて民を導く(5.13-12.24)
約束の地の分配(13.1-22.34)
ヨシユアの最期(23.1-24.33)
ヨシユアの告別の辞(23.1-16)
シケムでの集会(24.1-28)
ヨシユアの死と埋葬(24.29-33)