(新共同訳聖書スタディ版各書の概説 原文転載)
特徴
旧約聖書の中で最上の人物伝とも言えるサムエル記の下巻は、上巻の後半から続くダビデ物語である。ダビデの勝利と失敗が語られ、神との個人的な関係がいかにダビデの人生と王国の命運に重要な役割を持っていたかが示されている。
なぜ、書かれたのか?
もともと一つの書であったサムエル記の後半であるサムエル記下では、イスラエル最初の王たちの物語が引き続き語られる。サムエル記上はサウル王の死をもって終わっているが、下巻ではB.C.1010年から970年ごろとされるダビデの治世が扱われている。ダビデは神から与えられた約束の下、多くの戦いに勝利し、まずユダの王となり、更にイスラエル全体の王となる。治世の始まりは劇的な場面に彩られ、勝利に満ちたものであったが、やがてさまざまな問題が生じ始める。バト・シェバと罪を犯し、その夫の殺人を企てたダビデの人生は破綻へと向かい、家族はバラバラになっていく。
どんな背景があるのか?
サムエル記の著者はダビデの強さだけを描くのではなく、弱さも隠すことなく書き記している。B.C.7世紀後半以降にまとめられたとされるヨシュア記、士師記、サムエル記、列王記には神との契約を破れば、どのような事態に陥るかが繰り返し描かれており、イスラエルの民に教訓を与えるものになっている。国の平和と繁栄は神に忠実に生きるという契約の上に成り立っていたが(申7.12,13)、イスラエルは何度もその契約を破る。国が分裂し、東方の2大帝国(アッシリアとバビロニア)に破れ、ついには捕囚となった責任はいったい誰にあるのか――人々はそれを懸命に理解しようとした。サムエル記下を理解する鍵は、神がダビデと結んだ契約にある(7.16)。その契約において、神はダビデにその子孫がとこしえに王座に就くことを約束した。イスラエルの民が神に選ばれて油注がれた者、メシアを待ち望むようになったのはこの契約があったからである。後に、ダビデ王家の王位がエルサレム陥落によって途絶えると(王下25.7)、神はどのようにダビデとの約束を守るのかが危ぶまれたが、やがて預言者たちがダビデの末裔である新しい王について語り始める(エレ33.15、ダニ9.25)。新約聖書の時代には、イエスこそがその預言された新しい王であると理解された(使2.30、ロマ1.3,4)。
構成は?
サムエル記下は大きく二つに分けられる。前半ではダビデの勝利が語られ、後半ではダビデに起こした問題が扱われている。また、ダビデに関する幾つかの物語も付け加えられている。
ダビデの勝利(1.1-10.19)
ダビデ、サウルとヨナタンを悼む(1.1-27)
イスラエルの王(2.1-4.12)
ダビデ、イスラエルを統一(5.1-6.23)
ダビデへの神の約束(7.1-29)
ダビデ、イスラエルの敵を打ち破る(8.1-10.19)
ダビデが起こした問題(11.1-20.26)
ダビデの罪と苦しみ(11.1-12.31)
暴力がダビデ家を引き裂く(13.1-14.33)
アブサロムの反乱(15.1-19.44)
シェバの反逆(20.1-26)
その他の物語(21.1-24.25)
イスラエルの飢饉(21.1-14)
多くの勝利(21.15-22)
ダビデの歌(22.1-23.7)
ダビデの勇士たち(23.8-39)
人口調査の罪と神罰による破壊(24.1-25)